「4つの島の絵本」とは?
7月11日から8月10日まで、
沖縄県那覇市のジュンク堂那覇店にて「みる・よむ・きく・えがく 4つの島のことばの絵本展」が開催されました。
「4つの島の絵本」とは、
・鹿児島県の沖永良部島のことば(しまむに)
・沖縄県多良間島のことば(たらまふつ)、
・沖縄県竹富島のことば(てーどぅんむに)、
・沖縄県与那国島のことば(どぅなんむい)
と、日本語訳+英語訳で、それぞれの島の昔話や創作物語を描いた絵本で、
2019年からクラウドファンディングで支援を募り、
2022年にひつじ書房から出版されました。
左から、沖永良部島の『塩一升の運』、多良間島の『カンナマルクールクの神』、竹富島の『星砂の話』、与那国島の『ディラブディ』
塩一升の運(ましゅ いっしゅーぬ くれー)
沖永良部島の『塩一升の運』は、
神様に「塩一升」の運と、「竹一本」の運を授けられた男女が、
夫婦になりながらも、やがて運命が分かれていく話で、
沖永良部島で古くから言い伝えられていたお話です。
絵本は、島内2つの集落の言葉が収録されており、
島内の方言差もうかがい知ることが出来ます。
カンナマルクールクの神
多良間島の『カンナマルクールクの神』は、
美しすぎる娘クールクに翻弄される若者たちと、
クールクの悲しい運命を描いた絵本で、
多良間島で古くから言い伝えられたお話です。
クールクの美しい描写、多良間島方言の難しい発音にも注目です。
星砂の話
竹富島の『星砂の話』は、
竹富島にある、星の形をした砂の由来を描いた昔話です。
星のお母さんが竹富島で出産をしたところ、海の神様の怒りに触れてしまい…。
竹富島では、今でもこの星砂に由来した神事があるそうです。
ディラブディ
与那国島の『ディラブディ』は、
お腹を空かせた子どもたちのために、
ディラブディ,ウデャマ,イサの3人が漁に出て、
360匹も魚を獲ってくるという、とても楽しいお話です。
与那国島の民謡を元に、
与那国幼稚園の與那覇悦子先生が幼稚園の方言劇にまとめました。
クラウドファンディングについての詳細はこちら:
「大きいもの」って何?
4つのお話は、どれも島々に語り継がれたり、民謡として知られたストーリーでしたが、絵本という視覚媒体に落とし込むには、苦労もありました。
昔話の中には、視覚化しにくいものが沢山あります。
例えば、竹富島の『星砂の話』では
星の子どもたちを食べてしまう「いんなぬ ふーむぬ」(直訳:海の大きなもの)が登場しますが、「大きなもの」が一体何か?は、お話だけでは分かりません。
地域の方々のお話を聞くと、ウミヘビ、サメ、龍、大蛇などの説がありましたが、最終的には “龍” として描かれることになりました。
龍として描かれる「いんなぬ ふーむぬ」『星砂の話』12-13ページ
神様の性別は?
また、沖永良部島の『塩一升の運』では、
運命を授ける神様として「ニラの神様」が登場します。
ニラの神様は、初め、とても女性的な神様として描かれましたが、
島の民俗学者の先生から、ニライカナイの神は男性~中性的な存在と解釈すべきだと教えていただき、
イラストのバランスを取りながらも、より中性的な描写へと書き換えられました。
右上の「ニラの神様」はより中性的な描写へ『塩一升の運』P2-3
このように、伝承者から昔話を聞くだけでなく、
様々な地域の方への取材、島の文化・思想世界の理解など、
長い時間をかけて絵本のイラストレーションが出来上がりました。
この4つの絵本にちなんだ、原画展・トークショー・ワークショップ・演奏会が、
7月11日から8月10日まで、沖縄県那覇市のジュンク堂那覇店にて開催されましたので、
次回はその様子をお伝えします。