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2つのンの違いはどこにある?

2022.08.04
多良間島

「三杯(さんばい)」と「三台(さんだい)」――。2文字目はいずれも「ん」と表記される音で、普段私たちはこの2つの音を区別していません。しかしこの2つの音をよく観察してみると、違いがあることに気が付きます。ためしに「三杯」と発音するつもりで、「サン…」と言い差してみてください。そしてのときに口の中がどんな状態になっているかをじっくり観察してみましょう。「三杯」のについてよく観察したら、「三台」でも同じようにを観察してみてください。…2つのの違いに気づきましたか?

 

2つのを比べてみると、口のどこの部分がくっついているかが違っています。「三杯」のでは上唇と下唇が閉じています。上唇と下唇をくっつけることから、「三杯」のは両唇音と言い、[m] の記号で表します。一方、「三台」のは舌の先が歯茎にくっついています。歯茎に舌がくっつくことから、「三台」のは歯茎音と呼ばれ、[n] の記号で表します。私たち日本語母語話者はこの2つのを区別せず、同じ音として認識しています。しかし、よく観察してみると、両唇音と歯茎音というように、それぞれ違う特徴を持った音であることがわかります。

2つのンの調音の仕組み。両唇音(左)と歯茎音(右)。ピンクの円で囲った部分がくっついている箇所(斎藤純男 (2006)『日本語音声学入門 [改訂版]』三省堂から引用)

標準日本語では区別しないこの2つのですが、言語によっては別の音としてはっきり区別します。たとえば韓国語で [pam] と言うと「夜」を意味しますが、[pan] と言うと「クラス」を意味します。単語の終わりが [m] なのか [n] なのかで意味が区別されているのです。さらに韓国語では舌の奥の方と上顎の奥の方とをくっつけるを区別します。このは軟口蓋音と呼ばれ、[ŋ] の記号で表します(標準日本語では、「あんこ」のを [ŋ] で発音します)。

 

日本の方言の中にも、両唇音の [m] と歯茎音の [n] とを区別する方言がいくつかあります。その1つが宮古語多良間島方言です。たとえば「神」は [kam] と言いますが、「缶」は [kan] と言います。下の写真を見比べてみてください。この写真は「神」と「缶」を発音する様子を動画でそれぞれ撮影し、最後ののときの口の形状をキャプチャーしたものです。これを見てみると、「神」では上唇と下唇とがしっかり閉じていることが分かります。一方、「缶」では口がうっすらと開いており、その隙間から舌が歯茎の裏にくっついているのが見えます。

宮古語多良間方言の「神(左)」と「缶(右)」の発音の様子

ことばの学び

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Q.

沖縄県・宮古島の西原のことばで、「太陽」は何と言いますか?

What is the sun called in Nishihara-Ikema, Miyako Island?

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