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記事 | ARTICLE

小さい「っ」から始まる単語

2022.11.09
多良間島
日本語には絶対に単語の頭に現れない音が3つあります。「ん」(撥音)と「ー」(長音)、そして小さい「っ」(促音)です。 促音は重子音とも言われます。たとえば「かた(肩)」と「かった(勝った)」とを交互に発音して比べてみてください。「っ」は「た」の子音部分と同じ口の形で発音していることがわかりますか。「あか(垢)」と「あっか(悪化)」で比べてみても、やはり「っ」は直後の「か」の子音部分と同じです。まさに直後の子音を重ねているわけです。

促音(重子音)は、同じ子音を重ねて(つまり長く)発音します。

「重子音が単語の頭には現れない」という言語は日本語の他にももちろんあります。イタリア語やフィンランド語などがそうです。かと言って、重子音がある言語のすべてにおいて、重子音が単語の頭には現れないというわけではありません。言い換えれば、単語の頭にも重子音が現れることができる言語はあります。例えばパタニ・マレー語(Pattani Malay)では、すべての子音が語頭で重子音で現れることができます。
そして日本にも重子音が単語の頭に現れる言語があります。たとえば沖縄県宮古郡の多良間島方言には、小さい「っ」で始まる単語として、「っす(白)」、「っふ(黒)」、「っふぁ(子)」などがあります。下の画像を見てください。3つの単語の波形が並んでいます。それぞれの波形のうち、前部の黒い塊が摩擦音 [s](もしくは破擦音[ts])、後部の振幅が大きくなっている部分が母音です。波形全体のうち、子音部分が占める長さを比較すると、「っす(白)」[ssu] のそれは他の2語と比較して長くなっていることがわかります。この図から読み取れるように、多良間方言では、子音 [s] の長さの区別が語頭にも現れるのです。

[sɨː](巣)(左)と [ssu](白)(中央)を比べると、語全体のうち子音部分が占める長さが [ssu] の方が明らかに長いことがわかります。

ついでに摩擦音 [s]([sɨː](巣)の子音)と破擦音 [ts]([tsɨː](乳)の子音)の違いについても見てみましょう。調音するときの仕組みを比べてみると、この2つの子音は、舌先と歯茎とで完全な閉鎖を最初に作るかどうかが違っています。上の図の右の画像([tsɨː](乳)の音声)を見てみると、破擦音の閉鎖を解放するときに伴われるバースト音の痕跡が、波形とスペクトログラムの開始部に現れているのがわかります(図では薄緑の線で示しています)。一方、左の画像([sɨː](巣)の音声)にはバースト音の痕跡は見られません。

ことばの学び

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Q.

沖縄県石垣島白保のことばで、「太陽」は何と言うでしょう?

What do you think is the sun called in Shiraho, Ishigaki.

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