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「みる・きく・よむ・えがく」4つの島のことばの絵本展(後編)

2022.09.30
与那国島上平川国頭多良間島竹富島

7月11日から8月10日まで、沖縄県那覇市のジュンク堂那覇店にて「みる・よむ・きく・えがく 4つの島のことばの絵本展」が開催されました。

 

先月の記事で「4つの島のことばの絵本」の紹介をしたので、この記事では、7月30日、31日に開かれた絵本展のイベントについて紹介します。

 

先月の記事:https://museum.ninjal.ac.jp/area/okinoerabujima/kunigami/post-973.html

「4つの島のことばの絵本」の読み聞かせ

絵本と言えば、読み聞かせ。このイベントでも、2日間にわたり、沖永良部島、竹富島、多良間島、与那国島から話者さんがいらっしゃり、地域の言葉で、絵本の読み聞かせをしてくれました。

 

1.『塩一升の運』と、大変だった潮作り

最初に登場した絵本は、沖永良部島の『塩一升の運』

和泊町幼稚園教諭の田中美保子先生が読んでくださりました。

 

 

『塩一升の運』は、神様に運命を定められた男女の交錯を描いたお話なのですが、

 

『塩一升の運』を読むと、かつて「塩」がとても高価だったことが伺えます。

 

塩は、断崖絶壁の岩場で海水を何度も岩に打ち付け、塩分濃度を濃くしてから鍋で煮る…という重労働の末に作られたものでした。

 

読み聞かせの後には、方言を使った手遊び、そして潮作りが行われていた現場の写真と共に、当時の潮作りの大変さを語ってくれました。

 

2.『星砂の話』と、若い世代の島ことば

竹富島の『星砂の話』は、中学生の上勢頭舞音さん、水野晴香さん、阿部凪さんが読んでくれました。

 

 

『星砂の話』は、竹富島の浜を埋める「星型の砂」の由来を描いた美しい話です。

 

台風で飛行機の変更が相次ぐ中、当日到着で朗読を披露してくれた3人。

 

日常的には方言を使っていない世代の皆さんですが、

 

『星砂の話』を語ってくれた(故)内盛スミさんの録音をはじめ、3人の話者の方々に発音や抑揚を教えてもらい、練習をしたそうです。

 

朗読の後には、島での方言継承の活動や、若い人たちの島ことばへの意識も教えてくれました。

 

3.『カンナマルクールクの神』と、3世代朗読

 多良間島の『カンナマルクールク』を読んでくださった徳永美智子さんは、

娘の宮崎希恵さんとお子さんたち、従甥の本村拓さんの3世代で本を読んでくれました。

 

 

『カンナマールクールクの神』は異次元に美しい少女を巡る、哀しくも美しいお話です。

 

4つの島ことばの中でも、ピカイチに発音が難しい多良間方言

 

特に、摩擦音を伴う中舌母音は、研究者の下地賀代子先生も「何年も通ってやっとOKが出た」と語るくらいです。

 

こうした発音を若い世代が練習することはとても大変だったと思いますが、

 

絵本が中心になることで、

 

色んな世代が一緒に方言を使える機会が出来たことは、とても嬉しいことだと思います。

 

4.『ディラブディ』と与那国民謡

与那国島から、『ディラブディ』を読んでくださったのは、與那覇悦子先生、村松稔さん、譜久嶺マリサさん。

 

写真:垂見健吾氏撮影

 

『ディラブディ』は、漁に行った3人が大漁で帰ってくるとても明るいお話で、

 

與那覇先生の小気味いい語りは、どぅなんむぬい(与那国方言)が分からなくても、聞いているだけで楽しくなります。

 

このお話は、与那国島の民謡を元に、幼稚園で使う紙芝居を作成したものがもとになっているということで、イベントでは元になった民謡も踊って下さりました。

 

※譜久嶺さんが着ているのは、かつて日常着として使われていて、今でも島の伝統行事には欠かせない「ドゥタティ」です。

 

読み聞かせの間には、児童書コーナーの一面に絵本を飾っていただきました。

 

 

「島ことば」を使った娯楽の可能性

他にも、言語復興の港のトーク、絵本の原画展、八重山民謡とインドネシアのグルテンの演奏会、「ありがとう」のメッセージ・カードを作るワークショップなど、盛りだくさんのイベントでした。

 

絵本プロジェクトについて話す山田真寛代表と言語復興の港メンバー(垂見健吾氏撮影)

 

絵本の原画展

 

絵本と島の風景(風景写真:垂見健吾氏)。今回の絵本展は、写真家の垂見健吾さんのご協力により実現しました!

 

グンデル演奏家の亀島良泉さんと、八重山民謡の唄者、友利宇宙さん

 

いろんな言葉で「ありがとう」を伝えようワークショップ(撮影:垂見健吾氏)

 

**

 

私は主催者の1人として参加しましたが、印象に残ったのは、各島から様々な世代の参加者や、お客さんの方々が参加して下さったことです。

 

島ことばは、ご高齢の方のもの…というイメージを持たれやすいですが、

 

こうした、絵本や遊び、歌といった娯楽は、世代を交えて島ことばを使うきっかけになるのだと改めて感じました。

 

4つの絵本を基点に、「みる・よむ・きく・えがく」が色々な角度から楽しめるイベントでした。ご協力・ご共催頂いた皆様、本当にありがとうございました!

 

撮影:垂見健吾氏

 

にふぇーでーびる:那覇

ふがらさ:与那国

みーはいゆー:竹富

すでぃがぷー:多良間

みへでぃろ:沖永良部

おーきに:大阪

ありがとう:日本語

Thank you:英語

ことばの学び

LANGUAGE LESSON

ことばのワンポイントレッスンにトライしてみましょう! ランダムに表示される問題文に答えてください。

Let's try a one-point lesson on words!

Q.

沖縄県石垣島白保のことばで、「太陽」は何と言うでしょう?

What do you think is the sun called in Shiraho, Ishigaki.

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