主格
「が」「ぬ」の二つがあります。日本語共通語の「が」に当たる言い方です。「が」は、指示語、代名詞など、特定のものを指す名詞につき、「ぬ」は普通名詞につきます。名詞によってはどちらでもいい場合もあります。
例
1.えー、はいんかいや ばが いかでぃ
(ああ、畑には 私が 行こう)
2.くいんつきゃー かいがどぅ じゃうかい
(これより あれが いいね)
3.あがい、あみぬどぅ っふぃってぃにゃーん
(あ、雨が 降ってきた)
日本語共通語と同じく、状態を表す述語の対象を表すことができます。
4.ばー たくぬ なますぬどぅ ふぁうぶすかい
(おれは タコの 刺身が 食べたい)
属格
「が」「ぬ」の二つがあります。「の」に当たる言い方です。主格と同じ形で、区別の仕方も主格と同じです。
例
1.うぬ さなぬどぅ ばが むぬ
(この(その) 傘が 私のです)
2.んつぬ んなかう あいきや ならん
(道の まんなかを 歩いては いけない)
対格
与格・位格
「ん」で表します。 共通語の「だれだれに」「どこどこに」「いついつに」の「に」に当たる言い方です。「いん(犬)」のように「ん」で終わる名詞につくときは「いんん」とならず、「いん」となります。
例
1.はいん んーぬ いびでぃ
(畑に 芋を 植えよう)
2.いちゅふぬどぅ ちゅーがくぬ しーしん ないたい
(いとこが 中学の 先生に なった)
3.さぶろーや じろーん ばうひー なっじゅらいたい
(三郎は 次郎に 棒で 殴られた)
4.ひこーきゃー ひとぅいん ひとぅかいましか にゃーん
(飛行機は 一日に 一回しかない)
5.はなこー みはなぬどぅ んまん ゆー んーしゅー
(花子は 顔が 母親に よく 似ている)
〇共通語の「どこどこで」の「で」に当たる場合もあります。
6.よじたーひんな えきん まちうき
(4時までは 駅で 待っていなさい)
方向格
んかい 共通語の「へ」にあたる言い方ですが、「に」に近い使い方もします。
例
1.ひゃーひ いんかい いつぶすむぬ
(はやく 海に 行きたい)
2.んみゃ みゃーくんかいどぅ いきーうい
(もう 宮古に 行っている)
3.きーんかい ぬーらだうり
(木に 登るな)
4.んまー あちゃ っゔぁんかい いじゃいが いつがまた
(お母さんは明日お前に会いに行く)
〇「ん いきー(に 行き)」が短縮されて助詞のようになった「んきー」という言い方もあります。
5.はいんきー んーぬ いびーくーでぃ
(畑に 行って 芋を 植えて来よう)
道具格
ひー 共通語の「で」に当たる言い方です。短く「ひ」と発音されることもあります。
例
1.てぃーひー ちゅっふぁでぃ
(手で作ろう)
2.みゃーくたーひーや ふにひどぅ いふたい
(宮古までは 船で 行った)
共同格
とぅ 共通語の「と」に当たる言い方です。
例
1.っざとぅ ひとぅみ いきば
(お父さんと一緒に行きなさい)
2.どぅすとぅ あそぅび
(ともだちと遊べ)
3.かずことぅ はなこー どぅす
(和子と 花子は ともだちだ)
出所格
から 共通語の「から」に当たる言い方です。情報源を表す意味もあり、共通語の「で」に当たります。
例
1. はなこー ん゜ぬから やみどぅ にっゔぃーうい
(花子は 昨日から 病気で 寝ている)
2.さきゅーぎゃー まいからどぅ ちゅっふ
(酒は 米から 作る)
3.んまがー いつどぅ とーきょーから ふーが
(孫は東京からいつ帰るの)
4.てれびから みーたいそぅが
(テレビでみたけれど)
限界格 たーひー
共通語の「どこどこまで」「いついつまで」の「まで」にあたる言い方です。
例
1.うつなーたーひー いきーくーでぃ
(沖縄まで 行って来よう)
2.すとぅむてぃから ゆさらびたーひー あそぅーたい
(朝から 晩まで 遊んだ)
共通語では「彼が来るまで待とう。」のように動詞の基本形を直接「まで」につけることができますが、池間方言では、「かいが ふーきゃたーひー」のように「きゃ(時)」をつけて「彼が来るときまで」のように言わなければいけません。「かいが ふーたーひー」とは言えません。
比較
んつきゃー 「より」に当たる言い方です。格助詞とは言えないかもしれませんがここに置きます。
より詳しくはこちらを参照。
1.っぞぅんつきゃー わーぬどぅ たかだいかい
(魚より 豚肉のほうが 値段が高い)