「島ことば」の日
奄美群島では2月18日を「島ことばの日」と定めており、各地の小学校ではさまざまな島ことば継承に関する取り組みが行われています。
沖永良部島和泊町の大城小学校でも、月に1回、全校児童を集めて15分ほどの「しまむに(島ことば)タイム」の時間を設けています。
「しまむにタイム」に集まった児童たち
大城小学校の取り組み
大城小学校で「しまむに」に関する活動が始まったのは2019年(令和元年)度から。
朝の登校の時間に、長寿クラブの方々が校門で子どもたちを迎え、しまむにを交えながら、朝の挨拶と声がけをしていました。
各字の長寿会長の方々ご協力してくださったそうです
2021(令和3)年度からは毎月18日の週を「しまむに週間」として、田邊ツル子前校長を中心に、しまむにの「あいさつ」や「給食に使えるフレーズ」などのプリントを配布していました。
しかし、この取り組みは、先生による温度差等もあり、思ったほどにはうまくいきませんでした。そこで、取り組みを前進させるため、22(令和4)年度より、月に1回、地域の人を招いた「しまむにタイム」を設置することになりました。
教材づくりの工夫
「しまむにタイム」の講師は、卒業生でもある、皆吉泰智さん(61)。
大城小は「コミュニティ・スクール」(学校と地域住民などが力を合わせ、子どもたちのより良い環境づくりに取り組む)がとても進んでいる小学校で、皆吉さんも「大城小盛り上げ隊」のひとりです。
皆吉さんは、毎回事前に担当の柏木辰公先生と相談し、その時々の学校行事や、子どもたちの関心に沿った教材づくりをしています。
大城小学校には、地域の特色を生かした教育として、キビ作り、黒糖作り、米作りなどの行事があり、こうした年間行事の話題を積極的に取り入れることで、子どもたちが 〝家に帰ってすぐに使える〟工夫をしてきました。
「生きた、使いやすく、日常の暮らし、学校活動にも準じたものでないと、子どもたちには浸透していかないのではないか。たった15分で身につくようなものでもないし、子どもが興味を示し、おうちに持って帰り、親子で話題にするものをと思い、大城小ならではのタイムリーな教材づくりに至った」
と皆吉さんは話します。
しまむにタイム
私が見学した1月のしまむにタイムは、黒糖作りの話題。
皆吉さんは、しまむにタイム中はすべてしまむにで話し、プロジェクターに映し出された例文を皆で順番に読んでいきます。
プロジェクターに映るしまむにを声に出して読む子供たち
「うり、ひゅー つくたぬ くるざたでゃ(これ、今日作った黒砂糖だよ)」
「どー、かまちくりり (おお、食べさせて)」
「あまさ あてぃ しったい まさんでゃー(甘くてとても美味しいよ)」
「あいひゃー うっとぅるしゃ まっさんでゃー(ほんとだ、っても美味しいね)」
驚いたのは子どもたちのしまむにの上手さ。「うり わかよえ~?(意味が分かる人?)」と聞くと、数人が手を上げて、訳をします。
分からないところも、前後の文脈の中からどんどん正解に近付いていきます。普段、耳にしたり、話したりすることに慣れているのか、発音も上手です。
地域と連携した「しまむに」活動
後で聞けば、小学校では、校内放送で「一日の流れ」をしまむにで流しているそうです。
また、毎週火曜日の登下校の時間には、子どもたちから地域の人に向けて「今から帰るので、家や畑で見守ってください」と、しまむにで見守りをお願いする放送が流れるそうです。
皆吉さんの工夫が生きて、2月のしまむにタイムで「(1月の学習を受けて)やーにてぃ しまむに ちこたぬ ちゅー うろかや?(しまむに、家で使った人~?)」と聞けば、43人中12~13人が手を挙げたといいます。
様々な地域出身の先生がいる中で、学校の中だけで島ことばの学習を位置づけることはとても大変です。
しかし、地域と連携することで、こうした特色ある学習も可能になります。学校と地域がうまく協働した、とても良いしまむに学習だと感じました。