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東北弁の(?)「カメダ」

2024.05.23
出雲

これなーんだ?

 

タイトルを見ただけで、「あ、あの話か」と分かった方、さすがです。

今回は、小説にもなった、あの方言に関することです。

島根県仁多郡奥出雲町というところ

 

奥出雲町の棚田(宇田川和義氏提供)

島根県の南部、広島県との県境にある仁多郡奥出雲町。出雲空港からは車で40分ほど、鉄道だと山陰線の宍道駅で木次線に乗り換えてから1時間半以上かかります。出雲大社で有名な出雲市や国宝に指定された松江城のある松江市などの、日本海側の街からは少し離れた中国山地の中にある、緑豊かなところです。

 

伝統的にたたら製鉄が盛んな土地としても知られています。砂鉄を山の斜面から削り出した後、土地の有効利用のために作られた棚田では、仁多米というブランド米も作られています。

 

そして、何より奥出雲町の名が世に知られるきっかけとなったのが、松本清張の長編小説『砂の器』。映画やドラマにもなったこの小説は、「方言」が事件の謎を解く鍵となったことでも知られています。

 

出雲八代駅(JR木次線)。 映画「砂の器」のロケでも使われた。

そして、何より奥出雲町の名が世に知られるきっかけとなったのが、松本清張の長編小説『砂の器』。映画やドラマにもなったこの小説は、「方言」が事件の謎を解く鍵となったことでも知られています。

東北弁と似ている(?)出雲のことば

まだ『砂の器』をお読みでなく、映画やドラマをご覧になったこともない方の楽しみを取ってはいけないので、詳しくはお話しできませんが、話の中では、東北弁に似たことばが、奥出雲町を含む出雲地域でも話されている、そんな話題が出てきます。「東北弁のカメダ」も作中のキーワードです。

 

では、本当に似ているんでしょうか?

実際に、奥出雲のことばを聞いてみてください。

 

 

石(いし)

 

 

筋(すじ)

 

 

苺(いちご)

 

松(まつ)

 

水(みず)

 

 

いかがでしょうか。

 

東北弁っぽい? 全然違う?

 

印象はそれぞれだと思いますが、奥出雲のことば(に限らず、出雲のことば)では、共通語(標準語)で発音し分けられる、「し」と「す」、「ち」と「つ」、「じ(ぢ)」と「ず(づ)」の区別がありません。「松(まつ)」の「つ」は、共通語の感覚では「ち」とも「つ」とも言い切れない、あるいは、どちらとも聞こえる音で発音されます。そして、この特徴は、東北の多くのことばにも見られるものです。その点では、出雲のことばと東北のことばに似ているところが確かにあると言ってよさそうです。

出雲のことばの多様性

このような東北のことばとも共通する特徴は、広く出雲(島根県の東部)のことばに見られるものですが、もちろん、出雲のことばの中にも、様々なヴァリエーションが見られます(そして、東北のことばにもヴァリエーションがあります)。

 

例えばアクセントについて。

「海(うみ)」や「船(ふね)」といった、共通語で「高+低」(ex. )のようなアクセントになる語は、出雲でも東の方では共通語と同じアクセントになります。一方、出雲大社がある出雲市など北西の方の方言では、むしろ共通語の「音( )」などと同じアクセントで発音されることが多くなります。

 

また、出雲の中でも西部の出雲市や雲南市、そして、奥出雲町の方言では「怖い/恐ろしい」という意味で「オジェ」や「オジェー」と言いますが、東部の安来市では「キョテ」や「キョーテー」「キョートイ」と言うようです。

ことばの多様性を守ることがことばの多様性を減らす?

このように、同じ出雲のことばであっても、ところによって発音や語彙などがさまざまに異なっています。上で紹介した事柄は、そのうちのほんの一部で、実際に調査をしていると、出雲のことばの中の多様性を肌で感じます。そして、そんなことばの多様性を大事にしたい、その思いが、私の研究の1つのモチベーションです。

 

そんな中、ある時、地元の方にこんなことを言われたことがありました。

 

「あなた方(=研究者)は、出雲のことばを調査し、研究し、そして、守っていきたい、と言うけれど、その「出雲のことば」とは、どこの誰が話している「出雲のことば」なのか」

 

これは、出雲のことばの調査研究に関する活動の報告を、地元の方々にする機会をいただいた時のことでした。

 

我々(研究者)による調査・研究が進んでいった結果、「標準出雲弁」のようなものが作られて、むしろ、出雲のことばの中の多様性が失われてしまわないか、という御懸念をことばにしてくださったものだと思っています。出雲のことばの中で、どこか1つの方言だけが優先的に、集中的に調査・研究されることで、そのことばこそが出雲のことばの代表である、という認知が広まってしまわないか、ということです。

 

皆さんは、どのようにお考えになるでしょうか。

出雲のことばはまだまだだ元気

各地の出雲のことばはまだまだ元気です。

それもそのはず。出雲には、各地に「方言保存会」「方言研究会」があり、それぞれに盛んな活動をしておられます。出雲に行くたびに、そうした地元の方々の、「自分たちのことば」に対する熱い思いを感じます。

 

これから数回にわたって、私の記事では、奥出雲を中心とした出雲のことばに関する話題を、地元の方々の取り組みなども取り上げながら、ご紹介していきたいと思います。地域のことばに関心を持つみなさんに、楽しんでもらえれば、と思います。

 

 

2022年、コロナ禍の中で発足した「奥出雲弁研究会」。 「保存会」ではなく「研究会」であることが、実はポイント。

 

 

(注:記事冒頭の画像は、調査の時にいただいた「お漬物の盛り合わせ」でした)

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