
弘前城
前回の記事では、現代の共通語(いわゆる「標準語」)では使われなくなった古語が津軽方言に現存する事例を考察しました。これらの言葉そのものに加え、津軽方言の発音が8世紀へのタイムマシンの役割を果たすこともあります。
その主因は、上代日本語の『清音と濁音』の区別が現代の共通語のような有声音と無声音(例:「た」ta と「だ」da)ではなく、有声音と前鼻音(例:「た」ta と「んた」nta や nda)でした。
例を見てみましょう。例えば、「首」(くび)という単語は、現代共通語のように「くび」ではなく「くんぴ」あるいは「くんび」のように発音されていたことということです。
さらに、上代日本語における「ハ行」は、p- から始まりましたが、現代共通語では h- に発音が弱化してきました。
しかし、津軽方言では、ハ行から始まる言葉は、p- とは h- の中間音である f- として残っていることが確認できます!
以下の音声を聞いてみてください!
それぞれの列には、津軽方言のひらがな表記(TD)、発音記号、共通語の対応語(SJ)、英語(English)、それぞれの単語を用いた例文が記されています。
津軽方言のを聞くと、古代日本語の音声の一部が、現代の津軽方言に受け継がれていることが分かります。
① きなの ばげ 寝違えで くんぴた こいで じゃ
(昨日の夜寝違えて首が痛い)
② ゆんび 蚊さ かいで け じゃ
(指を蚊に刺されて痒い)
③ おいの とっちゃ よろげで よろたさ あんざ こへでら じゃ
(うちの父さん転んで太ももに痣ができた)
④ あのネゴ やへでまって あんばら ういでまってら じゃ
(あの猫は痩せて肋が浮いている)
⑤ おいの あば、 からんだ あんべ いぐねくてら じゃ
(うちのお婆ちゃんの体調がよくない)
⑥ ふぁ いで へ
(歯が痛い)
⑦ ふぇ を ふる
(屁をする)
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